|
1998年7月号 Newton を評価する1995年12月号から開始され、Newton を取り上げる連載記事としては最も長寿となってしまった「PDA 万歳」だが、Apple Computer Inc.の Newton ディスコン発表もあり、この辺りで区切りと付ける頃合だと判断した.本号を含めて5回で、日本における Newton の総括ができるようにしたいと思う.まず第一回目として本号では、Newtonの置かれている位置というお題でお話ししよう.言うまでもなく Personal Digital Assistant (PDA)という言葉を最初に使ったのは当時 Apple Computer Inc.の C.E.O.であったジョン・スカリーである.彼が目指そうとしていたのは、アスシト機能を使い、秘書として機能するようなデバイスであったのだろう.Original MessagePad (OMP) には、手書き認識、アシスト機能、メモ帳のメタファー、独自のファイル管理、ユニコードの採用など、特筆すべき要素をいくつも兼ね備えていたが、CPU の能力不足のため、完璧な動作からはほど遠かった.
さて、では何故 Newton はメジャーになれなかったのだろうか?日本におけるこの分野でのライバルを検証してみよう.
ザウルスまず、日本での強力なライバルとして、ザウルスがある.こちらのほうが一般の方には使いやすいのであろう.優秀な手書き認識エンジンの搭載により、キーボード嫌いの方にも入力ができ、必要と思われる項目が予め用意されているから、すぐに使える.またザウルス以前の所謂日本型電子手帳からの乗り換えも容易だった.さらに度重なる新機種の投入で、モデム内蔵、メールはおろかウエッブのブラウズ、カラー液晶の搭載、果てはデジタルカメラまで利用できるようになっている.つまり日本人に最も分かりやすい機能満載型の進化をとげている.
HP LX Series一方でヒューレットパッカード社の HP 95LX から 200LX のラインは完璧な DOS のパソコンを持ち歩けるようにしたものと考えて良いのであろう.出来の良いP.I.M.機能に加えて、優秀なデータベースソフトや、Pocket Quicken まで搭載されていたし、NIFTY SERVE でのメール交換のみならず、フォーラムの会議室巡回、ブラウズ、書き込みも可能になった.当初はユーザーの手によって開発された日本語化ソフトも、きちんと販売されるようになった.キーボードや DOS の呪文さえ苦にならなければ、これほど高機能で便利なデバイスは無いだろう.
Palm Pilot一番新しくこの分野に参入してきたのは PalmPilot でる.そもそも Newton 用の手書き認識ソフトであった Graffiti をメインに採用し、HotSync 機能で瞬時にPCとのデータ交換の道具を用意し、誤解を恐れずに書けば、潔く P.I.M.ブラウザーに徹して、小形化を計るというのがコンセプトであろう.データの入力はなるべくPC上で行い、どうしても必要な場合にのみPalmPilot上で入力するというやり方だ.電車の中で、どうしてもレポートを書かなければならない場合など、一般的には殆ど無いだろうから、これで十分であろう.こちらもフリーから始まった日本語化の流れが繋がっている.ここでは代表的な3つのデバイスを取り上げたが、この他にもメール交換に特化したモバイルギアや、最近では Windows CE 2.0 を採用したカラー機も登場して市場を賑わしている. さて、ここで説明した3機種のカタログを並べて、スペック、価格、可能な機能を比較検討した場合に Newton を選ぶ新規ユーザーは滅多にいないだろう.つまりカタログには現れない魅力が Newton の魅力だと言える. 身の回りの情報というと大袈裟だが、ちょっとした覚え、メモなど、我々生活をスムーズにする情報の整理には、Newton は最適である.特に文字どおり「書く」という点にこだわったデバイスは Newton 以外には無い.書いたものを「保存 (Save) する」ことを意識しなくても、常にデータは蓄積されてゆき、整理しなくても呼び出せる.こんなデバイスは他には無い. しかもこの動作を物理的なメモ用紙に鉛筆で書くというメタファーを、独自のインターフェースに昇華したものが Newton OS と Notes のルックアンドフィールではないかと考える.もちろん柔軟な構造の Names や、多用な使い方のできる NewtonBook などにも、メーカーのお仕着せでなく使う人が自由に使えるようにとの配慮がなされている.これを素晴らしいものだと捉えるか、自分の外部頭脳として活用できるかをユーザー自身が考えなければならないと受け取るかが分かれ目になるし、 Newton を分かりにくくしている原因であろう. さて、来月からは具体的な Newton 、特に MessagePad の使いこなしについてお話しよう.何かご要望などあれば、編集部あて巻末の葉書で連絡してほしい.
この文章は1998年6月18日発売のMACLIFE誌に掲載された記事です。従って現時点での情報と異なる点があることを予めご了承ください。 |